第209章 この女は頭がない

橘結衣は、大衡グループに長居するつもりはなかった。

午後2時になれば、大野晴也のほうに「荷が差し押さえられた」という連絡が入る。そうなれば、向こうから必ず彼女へ連絡してくる。

踵を返して外へ出ようとした、その背中に声が飛んだ。

「おい。お前が橘グループのお嬢様か?」

橘結衣が振り向くと、数人の男がこちらへ歩いてくる。

そのうちの一人は、結衣も事前に把握していた人物だった。大野晴也が組もうとしている金盛グループの御曹司――今井博也。

橘結衣の視線が今井に止まる。

「ええ、そうだけど。何か?」

今井は結衣を値踏みするように眺め、鼻で笑った。

「リバービュー・ガーデンの件で来たん...

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